フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
 琴美は私と麗の板挟みにになっていた。彼女はとても優しい子。その優しさを利用しているようで心が痛かったが、激しくモメたせいで疲れてしまい、自分一人で戦う勇気がわかなかった。
 琴美がくれたメモ用紙は、犬のキャラクターがついた可愛い物だった。しかし書かれていた内容は、とても厳しい物だった。
―昨日の夜、麗ちゃんに色々聞いてみたよ。麗ちゃんはやっぱり勇太君が許せないみたい。私もそれとなく説得してみたけど、ガンとして聞き入れてくれなかった。…それと、美羽ちゃんの事もすごく怒っていて、今の状況では仲直りするのが難しいかもしれない。でもね、私は麗ちゃんにも悪い部分があると思うから、美羽ちゃんは落ち込んだりしないでね。あんなに仲良くしていたんだもの、少し冷却期間をおけば、仲直りできると思うよ。―
読み終えて、一瞬頭の中が真っ白になった。強気な麗は自分の非を認めようとしない。全面的相手に非があると思いこんでいる。
 決して振り返ろうとしない華奢な背中を見ると、胸が苦しくなった。今日も腰まで伸びたストレートヘアは、はちみつでも塗ったかのように、しっとりしていてウットリするほど綺麗だった。彼女と仲良くなった時、『美人な友達ができて嬉しい!』と心から喜んだ。自慢だった。しかし今は、チラリとさえ見てもらえず、切なかった。
(…でも、勇太君に対する態度は絶対間違っていると思う。必ず訂正させなきゃ。できるだけ早く仲直りしたいけど、ここは琴美の言うとおり時間が解決するのを待つか)
気まずい思いを抱えたまま日々を過ごすと決めた私は、これから待ち受けている暗くて重い人生を思うとため息が漏れた。
 一時間目の授業が終わると、勇太は群がってくる女子をかわし、私のところへやって来た。
「勇太君、どうしたの?」
「これ読んで」
勇太は私をチラリと見ると、机の上にノートの切れ端で作ったと思われるメモをすばやく起き、足早に教室を出ていった。
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