フェアマン～愛しい彼はハーフの男の子～

（何？何がかいてあるの？）
はやる気持ちを押さえ周囲を確認すると、急いでメモ用紙をつかみ、スカートのポケットへつっこんだ。勇太に群がっていた女子は私へ向かって疑り深いまなざしを向けたが、すぐ勇太お追いかけて教室を飛び出して行った。私はホッとして胸をなで下ろした。
（よかった、メモをもらったのみつからなかったみたい。一目があるから違うところへ行って開けようかな）
どこへ行ったらいいかよくわからなかったが、じっと座っていられず、とりあえず教室を出ていこうとした。
「美羽ちゃん、どこへ行くの？」
「ちょ、ちょっとトイレ！」
口から出任せに言うと、小走りで教室を飛び出した。そして、本当にトイレへ行った。他に行く場所が思いつかなかったのだ。
　教室から一番近い女子トイレには、隣のクラスの女子が３人いて、鏡の前でおしゃべりしながら髪型を直したり、リップを塗ったりしていた。誰も私を怪しむ人はいない。
　それでも確認したくなるのをガマンし、一番奥の個室へ入った。
　すると、本当に誰も怪しまなかった。『ちょっと出て来なさいよ！』とドアをノックしないか不安になり、ドアに耳をくっつけ外の音を聞いた。隣のクラスの女子３人は楽しげに会話を交わしながら去っていった。私はようやくホッと胸をなで下ろした。
　しかしポケットに手を入れメモ用紙を取り出せば、再びドキドキした。両手で挟めば、祈った。
（ショックな事が書いてありませんように！）
それでもメモを開く時、緊張で手が震えた。勇太のようにカッコイイ男子からこっそりメモをもらった事なんてない。だから信じられなかった。
「え？」
カサカサと渇いた音をたてて開いたメモ用紙には、意外な言葉が書かれていた。
―勇太の携帯電話の番号と、メールアドレス。『話したいことがあるので、できるだけ早く時間を作って下さい。返事、待っています』―