フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
 教室を出ると、すぐ心の中は『勇太に告白されるかもしれない』と言うハッピーな気持ちでいっぱいになった。さきほどまでの悲しみは微塵もない。密会の場所であるパソコン教室へ近付くたび、テンションは上がった。
(うわー!でも、告白されたら、私気絶しちゃうかも!ああ、そうしたら、勇太君が介抱してくれるからいいか。…ってことは、彼の腕の中で目覚めちゃったりする?きゃーっ!すっ、ステキすぎ!今気絶しちゃいそう!)
たまらず、100センチくらい飛び上がりながらスキップした。すれ違う人はみんな私を『変な人』と言う目で見た。それでもガマンできない。体が勝手に動くのだ。
 すると突然、メールの受信を知らせる着信メロディーが鳴った。
(誰だろう?)
今は学校にいて昼休み。校外に知人があまりいない私は、学校にいる間ほとんどメールが来ない。来るのは珍しい。学校にいる人なら、必ず会いに来てくれるから。
 スカートのポケットから携帯電話を取り出し急いで操作する。勇太が待っていると思うと、自然と動作も速くなった。
 しかし受信トレイを開けば、そこには意外な名前があった。
(勇太君!何で?これから会うのに…)
驚きつつもメールを開くと、納得のいく内容が書いてあった。
―追っかけの女子達をまけなかった!今、待ち合わせのパソコン教室にいるんだけど、教室の前には人だかりが出来ていて、とても村瀬さんが入ってくる事はできない。今回はキャンセルしてもいいかな?必ず違う日に会えるようにするから―
(人気者は辛いなぁー。残念!)
私はガッカリして返信メールを送った。もちろん精一杯明るいフリをして。
―いいよ、気にしないで。またの機会を待っているから!―
かくして今日の昼休みは、琴美と麗の事について話し合った。これはこれで実り多い物だったが、私のテンションは数分で上がったり下がったりし、とても疲れた。
(穏やかで平凡な日々って大切かも…)
切実に思った。
 だがしかし、事件はさらに起こった。

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