フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
悲しいフェイント
(あー疲れた。いつもより、すっごく疲れた!)
私はグッタリして体育館を出た。普通に練習してきたのに、大会の目前に行うミッチリ練習よりダンゼン疲れた。
(やっぱり人間関係って大切だよね。うまく行かないと精神的にくるもん。精神が病むと、練習でしごかれるよりずっと体力を奪われる。もう、本当にキツイ!)
口に出して言いそうになるのを必死にガマンしながら、心の中で叫んだ。もし言えば、一緒に帰ろうとしている同級生に負のエネルギーを注入し、麗へのバッシングが一層激しくなると思ったからだ。
 ただ、ガマンしているとやる気がさらに削がれた。帰るためにのこしておいた気力さえ、削がれてしまいそうだった。
 『なんかもう、帰るのもメンドウくさい』と密かに心の中でグチっていると、ハーフパンツの左ポケットに入れた携帯電話がメール着信のメロディーを鳴らした。
(誰からだろう?)
何気なく携帯電話を取り出し受信トレイを開けば、そこには思いがけない人の名前があった。
(勇太君!)
予想外のメールに驚きすぎて、思わず『キャーッ!』と大はしゃぎしそうになった。今度はそれを必死の思いでガマンし、できるだけふつうに見えるよう気をつけた。
(勇太君からメールが来たなんてバレたら大変な事になる。きっと殺される!私がお世話係をしているとはいえ、うらやましいだろうから)
「ねえ、美羽」
とたん、優香が私を呼んだ。
(バ、バレた?変だってバレた?)
心臓がドキドキする。悪いことをしているような気さえした。
「あたし、明日の英語の授業で和訳当てられていたっけ?」
「えっ?えっ?ど、どうだっけ?」
「朱美は先生がそう言っていたって言うんだけど、その時、うたた寝していて良く覚えていないんだよね」
「へぇーそうな…あっ!あー、うん、そいうや新田先生言っていた。朱美の言う通り、優香当てられていたよ」
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