フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「マジでぇー!うわっ、やりたくなーい!」
優香は『メンドウくさい!』と叫びながら地団駄を踏んだが、私はホッとした。
(バレていない。よかった!)
その勢いで勇太から来たメールを開けば、ドキッとするような内容が書かれていた。
―『お昼休みに話しができなかったので、これからどう?忙しい?』―
(と、とうとう告白される時が来た!)
嬉しくて再び『キャーッ!』と叫びそうになったが何とかガマンし、急いで返信メールを打った。
 もちろん『オッケー』の内容で。
「そんなに急いでメールを打って、何か急用でもできた?」
「う、うん!お母さんに夕飯作るのに必要な物の買い物を頼まれたから、『買っていくよ』って返信しようと思って」
必死に知恵を絞り、苦し紛れの言い訳をした。しかしみんなのツボにハマったらしく、急に盛り上がりだした。
「やだよねー、もう。娘をこき使うな!っての。部活でヘトヘトに疲れているんだから」
「本当。醤油だのサラダ油だの、自分で階に行けばいいのに」
「『お母さん、今忙しいの。行ってきて!』って言うワリには、テレビ見るのに夢中だったりするんだよね」
「優香、今の言い方お母さんにソックリ!」
「やだ、似てないよ!どこ見てんのよ!」
「でもさ、お母さんて、よく人に物を頼むよね。私なんかこの前さ…」
盛り上がる仲間を横目で見ていた私は、内心ドキドキしながらもちょっとホッとした。
(食いつきいいな、このネタ。またピンチになったら使おう)
ナイスなネタをゲットし、無事勇太へメールを送った私は、ウキウキして携帯電話をハーフパンツのポケットにしまった。そしてみんなの後をついていった。
 もう頭の中はバラ色。すっかり天国へ旅立っていた。
(ウッフッフ、初デートだ。楽しみ!)
この時の私は、告白されると信じて疑わなかった。
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