フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
 バドミントン部のみんなといつもより早く別れると、カモフラージュのため回り道をして、待ち合わせのファストフード店へ向かった。カモフラージュのために向かった先は、もちろん母に買い物を頼まれて寄る事になっているスーパー。ただ中へは入らず、店の前を通過しただけだった。
 待ち合わせのファストフード店へ向かっている間、私はずっと鼻歌を歌っていた。嬉しくて嬉しくて、黙っていられなかった。
(勇太君、もう着いたかなぁー?まだ歩いているかのかなぁー?)
勇太が住んでいるマンションは学校から少し離れているので、バスと電車を乗り継ぎ通っている。今回選んだファストフード店も、バス停からわりと近く、ウチの学校の生徒があまり利用しないことを知っていて選んだ。他のクラスの女子達に勇太と一緒にいるところを見られてモメるのがイヤだったから。
(モメるのは麗とだけで十分だよ)
ちょっとマイナスな事を考えていると、待ち合わせのファストフード店に着いた。店の前の邪魔にならない場所に自転車を止めると、2階建ての店内に入った。1階をグルリと見回せば、勇太の姿はなかった。
(まだ来ていないのかな?それとも2階にいるのかな?)
思いのまま、左手前にあった階段を上がり2階へ行くと、背の高い観葉植物に隠れるよう座っている勇太の背中を発見した。
 急ぎ足で近付くと、勇太は振り返り、ホッとしたような顔で私を見た。
「ごめん。こんなわかりづらいところに座って」
「ううん、大丈夫。お昼休みに女子に見つかったから、あえてわかりづらい場所を選んだんでしょ?」
「その通り!すごいね、探偵みたいだ」
2人してクスクスと笑うと、私は勇太と向かい合わせで座った。
「じゃあ私、飲み物を買いに行ってくる。勇太君も行く?」
「俺が誘ったから、俺が買いに行くよ。村瀬さん、何が飲みたい?」
「えっ、いいの?」
「もちろん」
「じゃあ…コーラをお願いします」
「了解」

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