フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
勇太は笑顔で頷くとサイフを右手に持ち、軽やかな足取りで一階へ下りていった。
(さっすが外国育ち。気遣いがスマートだわ!)
あまりのいい男っぷりに私は骨の髄までメロメロになり、『ハア…』と甘くため息をついた。思わず勇太が降りていった階段をボーッと眺めた。
 十分ほど経つと、勇太がオレンジ色のトレーの上に飲み物を二つ乗せ帰ってきた。私の目の前に座れば、私にMサイズの飲み物を渡してくれ、残っていたLサイズのカップを自分の前に置いた。そして手に持つと、一気にかなりの量を飲んだ。部活で喉が渇いていたに違いない。
 もちろん、私も飲んだ。しかしいつものように『ズズズーッ!』と派手に音はたてない。勇太の手前、ガサツに出来なかった。友人達が見れば『ブリッ子して!』とツッコミを入れられそうなほど、女の子らしくおしとやかに飲んだ。
「あのさ」
ふいに、勇太は言った。私はドキッとした。彼を見れば、改まった様子で見ていた。眼鏡の奥の瞳は、真剣な光をたたえていた。
(とうとう来た…とうとう告白の瞬間が来た!)
知らず知らず、紙コップを持つ手に力が入った。とたん、紙コップはグシャッと軽くつぶれた。
 心臓がバクバクと激しい鼓動を打つ。『好きだ』と言われるのはわかっているのに、緊張のあまり体温は急上昇し、脳みそは沸騰しそうだった。
「あのさ」
「う、うん」
「忙しいのに、わざわざ来てもらってゴメンね」
「ううん!今日は帰っても予定はないし、気にしないで」
すると、頭の中に『今日の夕飯は餃子だから、包むの手伝ってよ!』と、朝、母に言われていたのを思い出した。
(そ、そんな余裕は無いわ。母さん、一人でがんばって!)
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「そう?」
「うん」
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