フェアマン～愛しい彼はハーフの男の子～

勇太は言い終わると、再びジュースを飲んだ。私もつられるよう飲んだ。緊張ですごく喉が渇いていた。
　勇太は一つ大きくため息をついた。私はさらに緊張し、気が付けば呼吸するのをやめていた。
「話しって言うのはさ」
「う、うん」
私は少し前に身を乗り出した。
（『君が好き、付き合って下さい！』でしょ？）
「高嶋さんの事なんだ」
「えっ？」
私は店内中に響くほど、大きな声で言った。２階にいた５、６人のお客さんは『何事だ？』とビクリして私達を見た。勇太ももちろん、私を見た。
「ごめん！驚かせて。急な話でビックリしただろ？」
「う、ううん！だ、だだだ大丈夫。ぜんぜん大丈夫！」
（本当はぜんぜん大丈夫じゃないけど…）
予想外の展開に、私は泣きそうになった。気絶しそうだった。
（絶対『君が好きだ』って言ってくれると思ったのに。『君が好きだ』って言ってくれると思ったのに…）
そして、ハッとする。
（よもや『麗が好き』なんて言わないよね！）
衝撃的な展開がヒラメキ、頭から血の気が引いた。勇太は麗からプライドをズタボロにされるような事を言われたが、『彼女の美しさにすっかりまいっちゃったんだ。…気が付いたら、好きになっていたんだ』と言う可能性もある。
（ギャーッ！もう、そんな事になったらどうしよう！私、生きていけない！）
「村瀬さん？村瀬さん？」
「えっ？」
「大丈夫？疲れている？」
「うん、大丈夫だよ。気にしないで」