フェアマン～愛しい彼はハーフの男の子～
反射的に言った。思いはまるでこもっていない。当然、勇太は信じておらず、『しょうがないなぁ』と言う顔をした。
「あのさ、俺が転校してきたせいで、村瀬さんと高嶋さんの仲が悪くなっただろ？」
「そ、そんな事ないよ。あれ、痴話ゲンカだもん」
「村瀬さん達の事は、長瀬君から全部聞いたよ」
「・・・！」
（長瀬君かぁ。彼とは一年の時から同じクラスなんだよなぁ。しらばっくれるのは難しいかも…）
さっきとは違う動揺に、私の胸はドキドキした。ついオロオロと視線をさまよわせてしまった。
「村瀬さんと高嶋さん、そして田畑さんは、親友だって長瀬君が言っていた。三人共本当に仲が良くて、はた目から見ていてもうらやましかったって。『自分にもあんなふうに、楽しい時や辛い時を共に味わえる友達がいたら、毎日が充実するだろうな』って思いもしたって」
「そ、そう？」
「でも、俺が転校してきたから、三人の仲は悪くなった。村瀬さんが俺をかばってくれたから」
すると私の頭の中に、勇太が転校してきた日の事が鮮明に蘇った。
　麗は、私が勇太の話題を口にすると、つねにイライラしていた。それを見て、私もイラついた。琴美はハラハラして私達を見ていた。
　長瀬の言うとおり、勇太が転校して以来、私と麗の間には完全な亀裂が生まれている。また私は、親友が自分の好きな人を嫌っている事実を『受け入れざる終えない』状況にあった。
　思うと、だんだん切なくなってきた。
「ごめん」
「え…？」
突然、勇太は言った。
「ごめん、俺のせいで。親友とケンカする事になって」
「そんな！勇太君のせいだとは思っていないよ」

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