フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
愛か友情か?
 家にたどり着いた私は、ぼーっとして扉を開けた。
「あら、お帰り。遅かったわね、練習長引いたの?」
「うん」
「新人戦近いもんね。いっぱいやらなきゃ勝てないわね」
「うん」
「調子はどう?」
「うん」
「…ちょっと美羽。あんた何かあったの?」
「えっ?」
「何を聞いても『うん』ばかり。まともな返事が一つも返ってこない。どうしたのかと思って」
「な、無いよ、ない!ただ疲れてボーッとしていただけ」
「とってつけたような言い訳ね。あっやしー!」
「とってつけていないよ。本当に!」
「ふぅーん。…ま、いいわ。お母さんがんばって一人で餃子作ったから、ご飯できているわ。カバンを部屋に置いていらっしゃい、食べるわよ」
「お父さんは?」
「今日は会社の人と飲みに行くから、家で食べないんだって」
「ああ、そうなんだ」
私は慌てて部屋へ駆け込みドアをしめた。そのまま寄りかかれば、ふぅーっと大きく息を吐いた。
(危なかったー。落ち込んでいるの、バレるところだった!)
そう、私は落ち込んでいた。せっかく勇太に近付いたと思ったのに、いっきに距離がひらいたから。
(落ち込んでいるのに、これ以上傷口に塩を塗られたくない。気づかれないようにしなきゃ!)
ここ最近、母と意見が合わずよくケンカする。内容は色々だが、だいたい話し合っているうちに『そんな考えじゃ甘い』だの、『今はいいけど、あとで後悔するわよ』だの押しつけがましく言われ、ブチッとキレる。私は麗と対を張る負けず嫌いなので、黙っていられない。


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