フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
『あっ、美羽ちゃん。今、話していても大丈夫?』
「うん」
彼女の優しい声に、ホッとした。
『メール見たよ。大変だったね』
「そうなの。もう、ショックー!」
メールに同じ事を書いたのに、同じ事を言ってしまった。そしてそれから30分間、同じ出来事をベラベラとしゃべった。とにかく聞いて欲しかったのだ。しかし琴美は『ウザイ』とも『しつこい』とも言わなかった。最後まで『うん、うん』と言い、聞いてくれた。おかげでしゃべり終えた時は、すごくスッキリした。
「ありがとう、琴美。聞いてくれて」
『気にしないで、この前は私が聞いてもらったし。おあいこだよ』
「そう言ってくれると、嬉しいな」
『…ねえ、美羽ちゃん』
「何?」
『勇太君のこと、すごく好き?』
ドキッとした。メールでグチったから聞かれて当然だが、言われるとやっぱりドキッとした。
『美羽ちゃん?』
しかし、いつかは聞かれる事。ゴクリと唾を飲み込むと、携帯電話をギュッと握りしめた。
「あのね」
『うん』
「勇太君の事、好き、大好き!」
(言っちゃった。琴美、なんて言うかな?)
『そう、わかった』
「う、うん」
『今、大変な状況だけど、ガンバってね。私、応援するから』
「ほ、本当?ありがとう!…でもこれで、ますます麗と仲直り出来ない気がしてきた」
『なんで?』
「麗、勇太君が嫌いだもん。私が勇太君を大好きだって知ったら、もっと怒ると思う。『友達やめる!』って言うと思う」
『ああ、なるほど』
「もう、どうしていいかわからなくなってきた」
『そうだね。恋を取るか?友情を取るか?難しいよね』




< 55 / 200 >

この作品をシェア

pagetop