フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
突然の別れ
 しかし悪い状況という物は重なるもので、落ち込んでいる私をさらに落ち込ませる事件が起きた。
「どういう事か説明してみろ、村瀬」
「それは…」
「『それは』じゃないだろ。説明しろと言っているんだ」
練習が一休憩休憩に入ると、いきなり部長の新垣に用具庫へ呼び出された。もちろん中には誰もいない。『誰にも聞かせられない内容』を話したいのだろう。
 そんな新垣は、普段明るくて優しいだけに眉間にシワを寄せ怒っている顔はすごく怖かった。今にもグーでぶん殴りそうだった。
 新垣が私を呼び出した理由は、勇太が新垣に、私を『世話係から外してほしい』、『一人でがんばりたい』と言ったから。世話係につけて一週間ばかりで『外して欲しい』と言い出したので、新垣は勇太にヒドイ事をしたと思ったらしい。
(正直に話した方がいいのかな?でもそうすると、新垣君まで麗を悪者扱いしちゃうかもしれない。そんなことになったら、麗はバドミントン部にいられなくなるかもしれない。麗はバドミントンが大好きなのに、さすがに気の毒だな)
目を合わせず黙ったまま考えていると、新垣はフゥとため息をついた。
「村瀬。俺は何も村瀬を責めているんじゃない。『なぜ勇太が村瀬を世話係から外して欲しい』と言ったのか、その理由を知りたいんだ」
「えっ?」
「勇太は転校してきて日が浅い。おまけに異国の学校だ。俺達が考えているより、ずっと大変だろう。馴染むだけでも、すごいパワーがいるに違いない。なのに勇太は誰の力も借りずに『一人で生きていく』宣言をした。一緒にいる時間はまだそんなに長くないが、あいつの人の良さは十分わかった。だからこそ、気の毒でならない。その勇太が言ったんだ。誰かを思っての事に違いない」
「それは、まあ…」

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