フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「部員の間でモメた事が原因なら、俺が仲介役になって仲直りさせよう。そして村瀬には世話係へ戻ってもらって、これまで通り勇太を助けてやって欲しい。そのためには、勇太が断った原因を知らなければならない。だからまず、世話係である村瀬を呼んだ。何か知っている事があるだろうと思って。部内では一緒にいる時間が一番長いからな」
「そうだったんだ」
「どんな小さな事でも良い、思いつく限りすべて教えて欲しいんだ」
言い終えた新垣の表情は、とても真剣だが優しかった。
(ぶん殴るつもりじゃなかったんだ…)
私は恐れを抱いていたのを忘れ、彼の人の良さをしみじみと感じた。部のみんなが彼を部長に押した理由を、改めて感じもした。
(新垣君だったら、本当の事を話しても良いかもしれない。誰彼となくおもしろおかしくベラベラしゃべらないだろうし。真実を知っても、麗に冷たく接しないだろう)
私は意を決すると、新垣をちゃんと見た。
「誰にも話さないって約束してくれる?新垣だけの胸にしまっておいてくれる?」
「もちろんだ、約束しよう」
新垣が力強くうなずくと、私はこれまであった事を全て話した。麗の事をできるだけ悪者にしないよう注意しながら。
 ただ、話している間、とてもドキドキした。他の部員には『話しがあるから』と言ってあるが、いつ部長である新垣に用事があって呼びに来るかわからない。知らないうちに立ち聞きされ、もっと麗をイジめるかもしれない。そう思うと、緊張せずにいられなかった。
 私は話している最中、足音が近付いてこないか耳に神経を集中させた。そのため、話し終えると、すごく疲れた。
 新垣は聞き終えると、『ふーっ』と大きく息を吐き出した。彼は話しを聞いている間、ただ相づちを打つだけで何も言わなかった。
「なるほど。村瀬の話はよくわかった」
「麗の事、イジめないでね」
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