フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「もちろん、それも約束する。だから村瀬も約束を守って、勇太の世話係へ戻れよな」
「うん、わかった」
「さて、高嶋だが。どうするかなぁ…」
新垣はアゴに手を当て考えた。相手をよく知っているだけに、慎重に事を運ばなければ、さらに問題がこじれる。カンタンに解決策などは浮かばないだろう。
「よし、これで行くか」
「へっ?」
「とりあえず高嶋にも、これまで起こった事についてどう思っているか聞いてみる」
「また同じ話しを聞いてどうするの?時間の無駄じゃない?」
「そうでもないさ。解決策になるような、意外な話しを聞けるかもしれないぜ」
「どうだかねぇ」
「今、村瀬と高嶋はモメているから犬猿の仲だけど、元は親友だろ。そんなにカンタンに『親友やめます』なんて出来ないって。心の片隅には、必ず村瀬に対する情が残っている。だから口論の時、言えない事も合ったはずだ」
「私はそう思っていても、麗はそう思っていないかもしれない」
「聞いてみないとわからないだろ」
「うーん。可能性は低いと思うけど」
「そう言うことだからさ、村瀬はここで終わりな。お疲れ!…おっと、勇太に、世話係へ復活したことを必ず言いに行くんだぞ」
「えっ?新垣君から言ってくれるんじゃないの?」
「ああ。俺はこれから高嶋の話を聞かなきゃならないからな。村瀬自ら行って話してくれ」
「そ、そう?」
「じゃ、お互いがんばろうな」
新垣は私の両肩をすっかりつかむと、ニカッと笑った。手を放せば、回れ右して元気よく用具庫を出て行った。
(さすが部長。動きが速い!)
感心しつつも、私は重いため息をついた。
(勇太君に言わなきゃいけないんだ。お世話係に復活したって。まいったなぁー。勇太君、ファストフードの店で『俺は一人でがんばる』ってキッパリ言っていたからな。私の話、聞いてくれるかなぁ?)



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