フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「そんなことないよ、考えすぎだよ」
「考えすぎじゃない。だから俺は新垣に村瀬さんを世話係から外して欲しいとお願いしたんだ。これ以上、迷惑をかけたくなくて」
勇太の優しさを改めて感じ、胸がジンとした。熱くなった。彼を好きになったのは間違いじゃなかった。
「おい、高嶋。ちょっと待て!」
ふいに、せっぱ詰まった新垣の声が聞こえた。声のした方を見れば、髪を振り乱し怒りに満ちた顔をした麗が私へ向かって走って来ていた。すごい勢いで。その後を新垣が追っかけて来ている。私は瞬時に身の危険を感じ、血の気が引いていくのがわかった。逃げたくなった。
 ただ、あることにも気づいた。
(逃げちゃダメ。私、悪いことしていなんだから!逃げたら無実の罪を認める事になる!)
麗は私の目の前で仁王立ちになると、眉間に深くシワを寄せ、胸の前で腕を組んだ。バドミントン部のメンバーは全員手を止め、息を潜めて様子をうかがっていた。
「ちょっとアンタ。何、新垣にチクってんのよ」
「チクってなんかいない。事実を言っただけだよ」
「そうだ、高嶋。村瀬は高嶋を悪く言ったりしていない。これまであった事を俺に話してくれただけだ」
「新垣は黙っていて。私はコイツと話しをしてんの」
「コイツ呼ばわりするなんてヒドイよ高嶋さん。いくら頭にきているからって、ちゃんと名前で呼ぶのが礼儀だろ」
勇太は私を気の毒に思ったのだろう、麗の反撃も顧みず言ってくれた。しかし案の定、麗の逆鱗に触れたらしく、見たこともないほど険しい顔つきで私に吐き捨てるよう言った。
「村瀬美羽、アンタとは絶交よ。もう友達でもなんでもない!」
「麗!」
「友達を売るような奴なんか、人間じゃない。悪魔よ、魑魅魍魎よ!そんな奴と友達でなんていられない。顔も見たくない!」
「高嶋、言い過ぎだ!」
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