フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「新垣は黙っていろって言ったでしょ!」
麗が仮名きり声を上げたとたん、館内中が静かになった。他の部まで麗の声に驚き、何事かと練習の手を止めたのだ。
 しかし等の麗はお構いなしにしゃべり続けた。私は突然の爆弾発言に驚き、全身が震え、立っているのがやっとだった。
「とにかく、金輪際私にかかわらないで。隣に立っているフェア・マンとよろしくやってちょうだい」
「私は…私は麗の事を売ったりなんてしていない。みんなで仲良くやれるよう、新垣にこれまでの事を話しただけだよ」
「『麗』なんて、気安く呼ばないで。虫ずが走るわ!」
「ねえ、わかってよ。そんな風に冷たくしないでよ」
「アンタが悪いのよ。私がレイシーを嫌いだとわかっているのに、無理矢理『良い奴』だと思わせようとするから。嫌いなモンは嫌いなの。好きになれるハズがない!」
「麗!」
「できることなら、二人まとめて部からいなくなって欲しい。そして違う部に入って欲しい。部なら他にも沢山あるでしょ。バドミントン部にこだわる理由なんかない。二人共ズバ抜けて上手いわけじゃないんだから。第一、仲が良いんだから、ぜんぜんやったことのないスポーツでも、文化系でも、二人でやれば楽しいわよ」
『出て行け』と言われ、私はショックのあまり言葉を失った。今にも倒れそうだった。本当にもう、部を辞めるしか方法がない気がした。周りで見ていた部員も、誰も何も言わない。麗の強気な発言に、言葉を返す勇気が出ないのだ。
 そんな時、誰かが麗の目の前に立った。麗のラケットを差し出せば、とんでもない事を言った。
「いなくなるのはお前だ、高嶋」
部長の新垣だった。新垣は苦しそうに息を吐き出すと、麗の手に差し出したラケットを握らせた。麗は『えっ?』と言う顔で新垣を見た。
「今までありがとう、楽しかったよ。顧問の石田先生には俺から言っておく。高嶋の手は少しも患わせない」
「何、それ…」
< 65 / 200 >

この作品をシェア

pagetop