フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「高嶋は部の和を乱しすぎた。部活ってのは、みんなでするものなのに、お前は自分を中心にやろうとしすぎた」
「だって、私がいなくなったらどうするの?全国大会で上位に食い込めないんじゃないの?」
「たしかにそうかもしれない。でも、そうでないかもしれない。やってみなければ、わからない」
「和って…和だけで勝てるわけがないでしょ!」
「いいや、勝てる。俺はそれを今まで実感してきた。だから、和を大事にしてきた」
「子供の遊びじゃないのよ。結果を出せば、オリンピックにだって行けるのよ。それを棒に振るっての?」
「棒には振らない。俺達はみんな、そのために必死で練習しているんだ」
「でも、でも私がいつも勝っているから好成績を残せているんでしょ?いなくなったら困るでしょ?」
しかし誰も『うん』と言わない。新垣さえ黙ったままだ。
―みんな麗をうとましく思っていた。いなくなればいい、と思っていた。―
「…ああ、そう。わかった。私がいなくなればいいんでしょ!」
全員目を合わそうとしない。私を下を向いたままだった。
「和ってヤツを大事にして、せいぜい良い成績を残せばいいわ」
「・・・」
「私がいなくなったこと、後で後悔しても知らないから。後から『戻って来て欲しい』って言われても、絶対戻らないから!」
「…わかった。声をかけないようにする」
「絶対、戻らないからね!」
最後、麗の声は涙声になっていた。強気の彼女もさすがにショックだったらしい。
 メンバーに背を向けるよう回れ右をした麗は、全力で走って体育館を飛び出した。もちろん、誰も追いかけようとしない。全員その場にいて気まずそうに目を合わせるだけだった。
「大丈夫?」
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