フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
心の真ん中に忘れていた熱い思いが蘇る。それは誰かを『好き』だと言う気持ち。
(好きだから、一緒にいるだけで幸せ。相手を笑顔にしてあげたいと思う。悲しい顔なんかさせたくない!)
背中を優しくなぜてくれる勇太の大きい手を感じ、強く思う。ふと私は、ある気持ちに気づきショックを受けた。
(私は勇太君への愛と、麗への友情をどっちも手に入れようとしてたと思っていた。でも…本当は、片方だけを取ろうとしていたんだ。選ぼうとしていたんだ…)
一つ大きく深呼吸する。
(受け入れなければならない。受け入れなければならない!)
それは、とても自分勝手な事だった。今度は自分のワガママ加減に涙が出た。しかし、どうしてもそっちを選びたかった。どうしてもどうしても、選びたかった!
(私は『勇太君を愛すること』を選んでいた。麗との友情は、2番目にしようとしていた!友情より愛情を選んだんだ!)
苦しかった。けど、頭も心もスッキリした。モヤモヤしたものを一掃した気がした。
(私、勇太君と付き合いたい。勇太君の彼女になりたい!そのために『麗と絶交する』。親友との友情を捨てる!)
究極の選択だったが、迷いは無かった。今の私には、それしか考えられなかった。
 涙を何度か手でぬぐい呼吸を整えると、勇太の目を見た。勇太は申し訳なさそうに私を見ていた。
「やだな、勇太君。そんな目で私を見ないでよ」
「うん…」
「私ならもう大丈夫だよ。たくさん泣いたから、スッキリした。ショックも涙と一緒に流れ落ちたみたい」
「無理していない?」
「うん!本当に。もうすっかり元気!」
「あのさ」
「なに?」
「俺の前ではがんばらなくていいよ」
「え?」



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