フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
(どこ?どこ?私の周りは全部埋まっている。ハーフの彼の席はどこ?)
「それじゃあ、ホームルームを始めるぞ」
「先生、今日はテンポ良く進めて下さい!」
「おい、コマキ。それじゃあ、いつも俺がモタモタしているみたいじゃないか」
とたん、全員がドッと笑った。
「はい、訂正します!いつもテンポ良いのですが、今日はさらにテンポよくお願いします。メッチャ巻き巻きでお願いします!」
「慌ただしいなぁ。まあでも、しかたない。君たちの気持ちもわからないでもないからな」
「でしょ、先生!」
「よし。ではコマキの熱意に応えて、巻き巻きテンポで出欠を取るぞ。ただし、チャッチャッといくから、キチンと返事しない奴は欠席扱いになるからな。覚悟しろ!」
「はーい!」
「えーっ、マジっすか?」
「おおマジだ。気合い入れて俺の呼びかけを聞けよ」
元気よく返事をした女子に対し、男子は『やってらんない』とばかりにブゥたれた。
「では、阿部」
「はい!」
「安藤」
「へぇーい」
「井川」
「へぇーい」
出欠の確認の返事は顕著だった。やる気満々の女子に対し、男子はやる気がない。そこまでしなくてもいい、と思ったに違いない。私はドアの影からはみ出した転校生の肩をジロジロ見ながらも、大爆笑しそうになった。
「よーし、今日も遅刻常習犯以外はいるな。実にケッコウ」
いつもならここいらで再びドッと笑いが起きるのだが、みんなシーンとしている。誰も笑おうとしない。クスリ、とさえしない。少しでも早く転校生の全貌を知りたくてしょうがないのだ。


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