フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
ドキッとした。今まで男子からそんなふうに言われた事がなかったから。
「俺は村瀬さんにすごくお世話になっている。だからこれ以上俺のためにがんばらないで。たまには俺を頼って」
「勇太君…」
「俺もアメリカに友達を置いてきたから、友達と離ればなれになる辛さや寂しさは良くわかる」
「・・・」
「おまけに村瀬さんの場合は、心だけ離れてしまって、本人は目の前にいる。それはもっと辛い。俺なら寝込むくらい落ち込むと思う」
勇太は私の背中を撫でていた手と反対側の手で私の手をギュッと握った。予想外の行動に、私はドキッとした。
 いや、彼の熱い視線にドキッとした。友情以上のモノを感じた気がして。
(この予感が、本当になればいいのに…)
私はニッコリ笑って、手を握ってくれている彼の手の上に私の手を重ねた。『思いが伝わるように』と。
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」
「そう?」
「うん、すごく。お言葉に甘えて、このまま頼りたいくらいよ」
「いいよ。何をすればいい?」
「そのまま側にいて…」
一度視線を外し、深呼吸した。
(したことがないから、うまくいくかな?)
初体験の事に、心臓のドキドキが止まらない。しかし、こんなチャンス二度と無いかもしれないから、思い切ってトライしてみる事にした。
 すぐ左隣に座る勇太の二の腕にそっと頭を寄せ、軽く体重をかけた。まるで恋人にでもするかのように。
 とたん頬に、衣服を通してほのかな彼の体温を感じた。手で触れるのとは違う、大きくて包み込むようなぬくもり。
(幸せ…)
勇太は触れた瞬間、少し体をこわばらせた。しかしすぐにリラックスすると、静かに呼吸を繰り返し私を見た。嫌がる素振りは無い。
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