フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
「…もしかして、さっき電話で話している時、琴美の声聞こえた?」
「ちょっとね。すごくせっぱ詰まっているみたいだった」
「琴美には、いっぱい助けてもらっているんだ。だから困っている時は、ぜったい助けてあげたい」
「大親友だしね」
「うん!」
そして会話はとぎれた。琴美の家までは、道案内の会話くらいしかしなかった。しかし触れる彼のぬくもりが私の心を温めてくれるので、壁は感じなかった。ちゃんと満たされていた。
(ずーっとこの時間が続くといいな…。これって欲張り?)
さっきも幸せだったのにさらに幸せを感じ、手放したくなくなった。とても魅力的だった。
 だからだろう、琴美の家に着いた時、寂しかった。ちょっとショックだった。
(あーあ、着いちゃった…)
琴美が家から出てきて嬉しそうな顔をすれば、ショックを受けた。
(ごめんなさい。私が来るのを待っていたのに…)
「ありがとう、美羽ちゃん!来てくれてすごく嬉しい!」
「そ、そう?で、どうしたの?」
「それがね、DVDのレコーダーが動かないの」
「動かない?」
「うん。今日これからカゼをひいたおばあちゃんを看病しに行かなくちゃならないから泊まりになるのに、DVDのレコーダーが動かないの。夜の10時から『けがれた白衣』が入るのに!」
『けがれた白衣』とは、7月上旬から始まった連続ドラマ。天才外科医・吾妻が、日本一の大学病院で外科部長に上り詰めると言う筋書きのドラマなのだが、野望を叶えるために権力のある医師の妻達を次々とトリコにし、寝取り、その女達の力でのし上がっていく。早い話、大人向けのドラマだ。刺激を求める大人には好評で、視聴率はすこぶる良い。ただエッチな場面が多いので、女子高生には向いていない。全話見終わると、すれた大人になってしまいそうだった。

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