フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
『おーっ!』と一人部屋の中で小さく雄叫びを上げ拳を振り上げた。すると、ますますやる気が出た。
 予定通り早めに家を出ると、愛車である真っ赤な自転車をカッ飛ばし学校へ向かった。疲労はすぐに襲ってこない。快調だ。何事もなく学校へ着けば、すばやく駐輪場に自転車を止め、校舎の中へ駆け込んだ。
 正面玄関に人はほとんどいなかった。バス通学や自転車通学の生徒を含めても、多くの生徒が登校してくるのは8時10分過ぎ。しかし今はまだ午前7時30分。よほどの用事がある人以外、来ていないハズだ。
(しめしめ。予定通りほとんど人がいない。もし勇太君が来ていれば、誰に邪魔される事もなく取材ができる!)
ルンルンして外靴から上履きに履き替えると、スキップしながら教室へ向かった。人が少ないだろうから、教室でも問題ないと思ったのだ。
 と思いきや、教室の周りにはすでに人だかりが出来ていた。
(も、もしかして!)
嫌な予感を抱き近付くと、案の定、勇太の追っかけをしている女子達が目を輝かせ教室の中をのぞき込んでいた。
「こんなに早く勇太君を見れるなんて、ラッキーだよね」
「本当。1秒でも早く見たくて、がんばって早起きしたかいがあった!」
(私と同じ事を考えていたか。おそるべし、勇太ファン!)
『してやられた!』と反省しつつも、おとなしく身を引くわけにいかないので、強引にファンをかき分け教室へ入った。追っかけ女子達は全員勇太と暮らすが違うので、さすがに仲間では入ってこない。
(昨日、ウチのクラスの担任に『教室まで入ってくるな!』って怒られていたもんね。先生に感謝!)
『ムカツク』『何、あの女!』と言う彼女達の視線もなんのその、私は自分を見ている勇太に最高の笑顔で微笑み返した。
「おはよう、勇太君!早く来てくれてありがとう!」
< 85 / 200 >

この作品をシェア

pagetop