フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
捨てられない気持ち
 放課後、無事授業を終えると、グッタリして椅子の背もたれによりかかった。
(取材なんて不慣れな事をしたからかな。すっごく疲れた。部活ちゃんとできるかな?)
とたん、私はある事に気づきハッとした。そして麗を横目でチラリと見た。
 今は帰りのホームルーム中。担任が明日の連絡事項を伝えていたが、麗の様子が気になって話しが頭に入らない。
 取材で忙しい中、チラチラと麗の様子を見ていたが、まるで魂が抜けたようだった。ただ目が合えばギロリとニラみ、また視線を外せば魂が抜けたように遠くを見た。今までなら怒ったハリネズミのようにずっとビリビリした雰囲気を醸し出していたのに、すっかり成りを潜めてしまった。別人のようだ。
(新垣君に退部勧告を突きつけられたのが、よほど効いているのかな?)
昨日まで元気だった事を考えると、理由はそれしか考えられなかった。
(なんだかんだ言っても、毎日一生懸命練習していたもんね。麗が強いのは、もともと才能があるのもあるけど、誰よりもマジメに練習に取り組んでいた事は大きい)
朝練も、放課後の練習も、いつも誰よりも早く体育館へ行き、最後まで粘って練習していた。人一倍、熱心にやっていた。
(それって勝ちたいばかりじゃない。バドミントンが『好き』だからだ)
しかし今、それは取り上げられてしまった。自分の行いが悪かったので、当然と言えば当然だが、ふ抜けた姿をみたらかわいそうになってきた。
(麗はプライドが高いから、『ごめんなさい、私も言いすぎた』なんて、口が裂けても言わなさそう。部長の新垣君になんか、なおさら言わなさそう)
そう思っていたら、予想通りホームルームを終えると、さっさと教室を出て行った。念のため彼女の下駄箱を見に行ったら、残っていたのは上履きだけ。外靴もバドミントン用のシューズもなかった。
(本当に帰っちゃった。部活やらないで帰っちゃった…)

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