フェアマン~愛しい彼はハーフの男の子~
とても切なかった。昨日ひどい目にあわされたのに、とても切なくなった。
「麗ちゃん、帰っちゃったんだ」
「うん…」
いつの間にか側に琴美がいた。通学バッグを持っているところから見て、これから帰るところなのだろう。麗の事で頭がいっぱいだった私は、琴美をおいてきぼりにして玄関へやって来ていたのだ。
「本当に、バドミントン部辞めちゃうのかな?」
「昨日、琴美にも電話でそう言ったんでしょ?この調子なら、辞めちゃうかもね」
「もったいないね、あんなに上手なのに」
「琴美でも止められなかったんだもん、やる気にさせるのは難しいよ」
「そうなのかなぁ?」
琴美は『納得いかない』とばかりに呟いた。
「だって、大好きっていう気持ちって、心も魂も『大好き』って叫んでいる感じじゃない?それを辞めるって事は、心も魂も切り捨てるって事じゃない?」
「・・・!」
「血をダラダラ滝のように流すくらい、痛くてたまらないものだよ。泣き叫びたいくらい、辛い事だよ。私ならカンタンにできない」
「うん、そうだね」
「麗ちゃん『辞める』って言ったけど、上辺だけなんじゃないかな。本心じゃ後悔しているんじゃないかな」
「うん」
「きっかけさえあれば、戻りたいんじゃないかな?」
「私もそう思う」
「なんか気の毒だな、麗ちゃん」
「うん…」
私はちょっと申し訳ない気持ちになった。
 このまま黙っていてはいけない気がし、まっすぐ新垣の元へ行った。麗が顧問の先生にも『辞めます』と行ったかどうか確認するために。
(言っていなきゃいいな。もし『辞めます』って言って、先生が『わかった』て受けちゃったら、プライドの高い麗は二度とバドミントン部でバドミントンができなくなる。人に頭を下げるのが大嫌いだから)





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