眠り姫、目醒るとき
一歩


一歩



彼女の下へ近づくたび



心臓の鼓動が大きく、深く体の芯から響き渡る。



嫌な汗も気持ち悪さも分からなくなるくらい身体中の温度が上昇して止められない。




いつものように彼女を気遣う優しい彼は今はいない。

今いるのは






苦しみ藻掻く余裕のない男性。











『みーちゃん??』


電話をしながら話し掛ける愛理



「愛理、どうかした?」
電話の相手が尋ねる。






それを期に相手への愛理か返事は一言もなかった・・・。


ただ、電話向こうから聞こえてきたのは・・・




「や!返してっ!!」


「姉貴、そういうことだから。」





愛理の怯えた声と




弟の乾いた声






物音の後に



「や、やだ、離して・・・みやちゃんっ、みやちゃん、助けっ!!」


愛理の悲痛な声が聞こえて



電話が切れた。
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