眠り姫、目醒るとき
そう言われて尋ねた本人がいちばんびっくりしていた。


“完璧”と人に思われていたことに。




当たり障りなく、自分を下に話すのはいつもの愛理。


自分は人より優れていると思ったことはおそらく一度もないくらい、いつも抱いていたのは自己劣等感。





大和はずっと知っていた。



どんなに勉強ができたとしても

どんなに人より優れた格好でも



普通の暮らしが出来ない事ほど
苦しく辛い事はない。

いつ何時、眠りにつくか本人にも分からないSBS。(Sleeping Beauty syndrome)

原因不明だが、生まれつきの場合が多い。

愛理の場合、二日間寝続けて、一日起きる生活だが、個人差はある。
以前より進行したためか、眠る時間は少し長くなったよう。

進行もひとそれぞれ。
治療法ははっきりと解明されておらず、今のところ投薬治療で進行を抑える事しかできない。
進行すれば植物状態になることもある。

かかっている人数も少ないため難病指定いされている。


家族と同じように生活できない愛理。


2日仮死状態に近い体で眠り続ける体質。




眠りのサイクルはずれるから

真夜中を一人過ごすことは少なくなかった。



家族全員眠りの時間に目を覚まし、何も映らない砂嵐のテレビ。


眠る父や兄弟に迷惑を掛けないように朝まで静かに遊ぶ少女時代。


そんな彼女が心配な母親は彼女が起きている夜中もともに過ごしてあげていた。

『私は一人でも大丈夫よ』幼い頃から昼間も起きて、夜も一緒に起きていてくれる母親にことわる、気遣う子供だった。
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