冷徹な傷
「…あなたはその仔がなにもやってないってわかってたんでしょう?
いじめを止めたの?」
「…止められなかった。
いや、止めなかった…」
「あなた、最低ね。
傍観を選んだのかしら?傍観者は加害者よりも罪は重いわ。
だって、なにもかも知っていてなにも行動しないんですもの。」
「うん、全部わかってる。わかってるよ。
俺は真実を知っていながら皆に何も言わなかったんだ。
すごい卑怯だな、俺」
自嘲気味に彼が笑った。
「笑い事ではないわ。
現に彼女は死にかけて今も病院で意識不明なのよ。
でも、ちゃんと自覚しているのね。」
「うん、だって自分のことが最低だっていつも思っていなきゃ俺、やっていけないから。
俺が愛の力になっていたら…!」
「それを私に言ってどうするつもりなの?
それで許されるつもり?
それに愛は…愛はあなたたちのせいで傷ついた!
愛がいじめなんてすると思う?
愛はそんな子じゃないわ。
あなたたいだってそれくらいわかっているはず…!」