キセキ

大樹につつかれ目が覚めた
自己紹介は終わったらしい

「お前寝過ぎでしょ~(笑)」

「初日から寝ないのっ」

亜希が頭を叩いてくる


今日はもう下校らしい

俺は机の脇にかけたカバンを持ち上げた


「あ!待って!澪も一緒に帰らない?」


今まさに教室を出ようとしていた彼女に亜希が呼び掛けた


彼女は少し黙ってから頷いたので
俺と大樹は彼女にかけよる亜希について歩いた



「ホント綺麗な茶色だねー」


朝と同じ桜並木を歩いていた時
大樹がいつもの調子で声をかけながら
俺達の前を亜希と歩く彼女の髪に少し触れた

その瞬間


「いやっ…!」


パシンと乾いた音
払い退けられた手


亜希も俺も驚いたが
大樹はもっと驚いたに違いない

「だ、ダメだよ大樹くん(笑)
女の子の髪にむやみに触ったらっ」

少し苦しそうな笑顔で
亜希は大樹に話かけながら
彼女の肩を抱いた

「だよねっ、
えっと…ごめんねっ?」


大樹も驚きを隠せていない笑顔で謝る


俺はただずっと彼女を見ていた

彼女は唇を噛み締めていて
亜希の腕にしがみついた手は
微かに震えていた気がした




「…大樹、…ジュース」

突然口を開いた俺に
亜希も大樹もビックリ顔だ

高山さんも少しだけ唇を噛む力を弱めていた

「朝の罰ゲーム。
亜希は?何飲むの?」


「…あ!あたしコーラがいいな!」

「高山さんは?」

「え…?」

突然俺に話かけられて驚いたのか
俺を見上げたあとにキョロキョロとしている

「今、何飲みたい?」

再度質問すると黙ってしまった

「…ミルクティー…好き?」

彼女はコクりと頷いてくれた

「大樹、5分以内にコーラとミルクティー2つね
はいダッシュ
あ、チャリは置いていけ」

「えぇ!?キツい!チャリなし5分以内はキツいよ遥!!」

「はい、よーいスタート」


ちくしょーと叫びながら駆け出す大樹を亜希は笑って
その背中に頑張れー!とエールを送る

高山さんも少しだけ笑った気がした

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