空を見上げる


なんで逃げ出しちまったんだよ、俺………

葵の話を最後まで聞いてやればよかった………


俺は走りながら思う。

葵への後悔が俺の涙腺を緩める。

俺は走った。

顔をぐちゃぐちゃにしながら。

わざと目的地を設定せずに。

しばらく走り続けるとベンチがあったから座った。

両肩をベンチの腰掛けに乗せ、空を見上げてみた。

そこには青く澄み渡った空があった。

その空は俺の崩壊した心を優しく包んでくれた。

空に浮かぶ雲が俺の涙を拭う。

俺は辺りを見渡してみた。

そこは桜の木が道の両脇にズラリと並べられた一本道だった。


こんなにも居心地のいいとこがまだこの世にあったのか………


俺はまたここに来ると誓い、その場をあとにした。
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