Genesis of Noah
ゆりかごが揺れている。
傍らには優しい笑みを浮かべた男女が寄り添うように立っていた。
明るくて温かくて、まるで陽だまりのようないい匂いがする。
「…………ら………れ……ら………」
不意に肩を掴まれて、悲鳴が口から出そうになるのを、レイラは寸前のところで飲み込んだ。
振り返った先生と目が合い、訝しげに見つめられたがレイラは動揺を隠してモニターに集中した。
「珍しいね、レイラが授業中に居眠りするなんて。」
授業が終わるとすぐ、後ろの席からカイリスが話しかけてきた。
レイラはその間も眠りの間に見ていた一瞬の記憶をたぐっていた。
会話に答えずぼーっとしているレイラに、心配そうにカイリスが言う。
「今日はなんか変だよ、レイラ。調子が悪いなら、センターに問い合わせてあげるよ?」
「大丈夫。」
レイラは応える。
「それに、センターは午前中しか予約を受け付けてないでしょう?」
わざわざセンターに行かなくても、後でロイに聞けばいい。
レイラは兄の姿を思い浮かべて微笑んだ。
それにしても不思議な感覚だった。
あれはなんだったんだろう?
授業が始まっても、レイラの心は一瞬だけ見えた映像に囚われていた。