Genesis of Noah
「ただいま~」
レイラが家に帰ると、ロイが小さな眼鏡をかけて、本を読んでいた。
ロイが本を読んでいるときは、大抵何か良いことがあったときだ。
今日はなんだか機嫌がいいみたい、とレイラは思った。
今の時代に紙から情報をインプットするなんて、何百年も昔の作業をする者はいない。
電子データベースに問い合わせれば、あらゆる情報が一瞬でダウンロードできる。
しかし、ロイはいわゆる骨董品のマニアで、リビングには所狭しと本が並んでいる。
今ロイのかけている眼鏡も、ロイが掘り起こしてきたガラクタの一つだ。
かつて視力矯正として使っていたものだ、とロイがレイラに教えてくれた。
今ではとっくに需要の無くなったものだが、ロイはそういうものを好んでコレクションしている。
そんなロイをみんな変わり者だと笑っているが、レイラにとってはロイは頼りになるたった一人の家族だった。
「ロイ、なんだか楽しそう。何かいいことでもあったの?」
ソファに腰かけてレイラが問いかけると、ロイはやっと本から視線を上げた。
「レイラ、帰ってたのか……おかえり。
いや、今日は帰りに面白いものを見つけたんだよ。
明日そいつを掘り起こしてみようと思ってね。」
周りから見ればただのガラクタでも、ロイにとっては宝物になる。
瞳を輝かせているロイを見て、レイラも嬉しくなった。
「そうだ、ロイ。気になることがあるの。」
「どうした?」
少し表情を曇らせたレイラに、ロイは優しく話を促す。
昼間の話を、レイラはロイに説明した。