Genesis of Noah
がっちりとレイラの首に腕を巻きつけて、ヴェアニーがからかうように言った。
「いつまでもそんな幼稚なモンに夢中になってねぇで、少しは社会の為に貢献しろよ。」
カイリスはその言い草に膨れながらも、反論する言葉を見つけられない。
ヴェアニーは口は悪いが成績は優秀で、学生の間にサイバーテロと闘う新しいソフトの開発に携わり、修学後はそのプロジェクトチームに本格的に参加が内定している。
周囲にも一目置かれる存在なのだ。
本人はまさに社会貢献を有言実行している。
「みんながみんな、ヴェアのようにはなれないよ。」
カイリスを見かねた様子で、アンダシスが口を挟んだ。
「なんだよアンディ、お前だっていつまでもそんなこと言ってるから成長しねぇんだぞ?」
ヴェアニーに圧しかかられたままのレイラが、苦笑しながら言った。
「そんなこと言って、ヴェアだってロイの掘り起こしたものが気になるんでしょ?」
「そうだよ!なんだかんだ言って、いつもどんなものか見に来るくせに……」
カイリスもやっと追撃に加わる。
アンダシスは笑いながら言った。
「調査してる、でしょ?過去を知ることは未来を創るカギになるかもしれないもんね?」
アンダシスに先を読まれて、ヴェアニーも笑いを滲ませながら言う。
「まぁ、大抵がただのガラクタだけどな。」
「ヴェアニーにはロマンがないよね?」
こっそりとレイラに耳打ちするカイリスに、レイラは笑いながら返す。
「ヴェアのロマンは未来に向いてるんだよ。」
レイラの言葉にアンダシスも微笑んだ。
「確かに…。ヴェアほどのポジティブと強気は他に見たことがないね。」
「お前ら、聞こえてるぞ?」
意地悪く笑うヴェアニーに、アンダシスは澄ました顔で言う。
「聞こえるように言ったんだよ?」
「このっっ!」
じゃれ合う二人を見ながら、カイリスとレイラも顔を見合わせて吹き出した。
「もうすぐ授業が始まるよ。」
カイリスが二人に声をかける。
レイラもそれに続けた。
「じゃみんな、帰りにウチに寄ってね。」