Genesis of Noah
レイラが三人と出会ったのは、やっと言葉を覚えた頃だった。
ロイが学校へ行っている間、まだ幼いレイラを家の近かったカイリスの母親が預かってくれていた。
しかし、カイリスの母親も仕事を始め、二人はセンターに預けられることになったのだ。
センターとは、通常は年に一度義務付けられたメンテナンスを行う、政府の直営機関である。
一年間の間に得たデータによって、細かくボディパーツの変更や、希望すればICチップのバックアップを行っている。
突然のボディの不調やバグにも対応し、修繕なども行う公共の施設なのだ。
また、法律によって幼児を単独で放置することは禁止されているため、子供を預かる一時的な機関としても運営されている。
ヴェアニー、アンダシスの二人とはそこで出会ったのだ。
同い年の四人はすぐに仲良くなり、一緒に遊ぶようになった。
記憶を思い返しながら、レイラは昨日のロイの話を思い出していた。
古くなり、傷つき、思い出されることのなくなったデータ。
自分の中に確かにあったはずなのに、取り出すことができなくなってしまったら、それは存在しなかったことになってしまうのだろうか。
カイリスやヴェアニーやアンダシスやロイにも、そんな記憶があるのだろうか。
レイラの疑問は解答の得られないまま、データとして保存された。