トモダチとコイビトの間


前の席で
友だちと話す中川くん。

真っ白な歯が
笑うと
厚い唇からチラッと見える。

広い背中が上下しながら
楽しそうに話す中川くんに
いつも声に出さないで
おはよ
というのが日課。


「智子、そんな男の
何がいいわけ?」

「えー
年上だし、顔だって好みだし、
優しくて、エロいとこ」


マスカラを塗りながら
愛莉の質問に応える智子は
すっごく変な顔。


「ねぇ、智子
その顔…ひどいよ?」


もともときれいじゃない
あたしらは
化粧をしない。

だけど
最近は2人とも
化粧をし始めて
私は置いていかれる
気分がしていた。


「うるさいな。
あんたもやってあげるよ
つか、少しは化粧しな」

「今日は遠慮する」


机を伸びた爪で
トントンする愛莉は
何か言いたそうだ。


「愛莉?」
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