亮平のおもちゃ


 放課後、俺は信濃美樹に言われた場所へ行った。
昼間に、一緒に帰りたいから、昇降口で待ってろって、言われてた。
俺が居づらそうにしてんのは、昇降口が保健室の目の前だからってだけ。

「おまたせ。達也。早くデートしよっ?」

「は?デート?俺、金ねぇし。一緒に帰るだけで良いだろ?」

「ちぇー。美樹の彼氏は冷たいなぁー。」

この言葉に、俺はカチンときた。

「文句あんなら別れてみる?」

「やだー。ごめんね?」

「おら、帰っぞ?」



 俺は、信濃美樹の家まで送ってやった。

「ねぇ、美樹ん家寄って行かない?」

別れ際、そう言われたときは、即答で断った。

「無理。」

「大丈夫だよ?美樹ん家、今親いるよ?」

俺はシカトして帰った。



 家へ帰ると、携帯の電話がなった。
亮平だ。
やっぱり俺は、シカトできなかった。
だから出ることにした。

「はい、誰。」

亮平とはわかっていながら、つい癖でいつもの言い方をしてしまう。

「俺だけど、今から俺ん家来れる?つーか、来い。いろいろと、言いたいことある。」

「電話じゃダメなわけ?」

売り言葉に買い言葉状態になっていた。

「ダメ。さっさと来いよ。」

「やだね。いつも来るなって言うくせに。」

諦めると思ったけど、亮平はどうしても会って話したいらしい。

「じゃ、今からたつの家いくから。」

そこで電話はきれた。
いつもの俺なら、イラついて、家をでて行っただろう。だけど、本当に久しぶりに“たつ”って呼んでもらえたのが嬉しくなって、家で亮平を待った。

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