亮平のおもちゃ
「え。」

俺は、今のは本題じゃなかったんかい。と心の中で突っ込みをいれた。

「たつ、もう俺の事嫌いになったんか?トイレで言ってたときは、冗談だと思ってた。でも、お前女と付き合ってんだろ?いっちょまえに二股か。」

あぁ…。聞かれてたのか。もぉ逃げられない…。

「うん。俺、もお亮平のこと、好きじゃないや。」

俺は辛くなって、亮平に背を向けた。

「“男に興味なくなった”?」

亮平の声は、どこか悲しげだった。
でも、ここで振り向いたら、俺は別れられなくなる。

「てゆーか俺、今美樹にしか興味ないし。だから…」

「やめろ。…それ以上言うな。」

俺は、本当に辛くてしかたがなくなった。

「…んでだよ。二股とか、俺嫌だし。別れさせて?」

「たつこそ、なんでそんな事、言うんだよ。そんな悲しいこと、言うな。」

「やだ。別れて。」

俺は泣いてるのがバレないように、唇をかみ締めた。
すると、亮平に肩を掴まれ、向き合わされた。

「やめろッ。ほっといてくれよ。」

「イヤダ。別れてとか言うなら、何で泣いてるんだよ?」

「み、見んな。別に泣いてねぇ」

唇をかみ締めすぎて、血の味がした。

「俺、今どうしても美樹と付き合いたいんだよ。なのに、亮平、別れてくれないじゃん。それが辛いの!」

「…そうか。…悪かった。」



 一人残された部屋。
孤独だ。
さっきまで、本気で顔も見たくなかったのに、もう会いたい。
抱きしめて欲しい。
甘い声で囁いて欲しい。
キスしてほしい。
「亮平…ッ。」
部屋に響く無力な俺の声…。

あぁ…。本当にさよならだ。
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