亮平のおもちゃ
「だから、原田先生を助けられるのは、相馬君しか居ないと思うの。実は、まだ結婚届はだして無いのよ。ギリギリまで、彼に選んでもらおうと思ってて。…まぁ、おそらく結婚届を出したでしょうね。彼って、優しいけど冷たい。相馬君の事、第一に考えて、私の気持ちはあんまり考えない。それだけ相馬君を愛してるのよ。」
そう言って、新見は結婚届けを俺に渡した。
「これ、相馬君に捨ててもらいたいの。」
俺は、あふれてくる涙をこらえた。
「馬鹿野郎…。亮平の馬鹿。」
♪~♪~
急に、亮平の着メロが流れる…。
「え。」
なんで?亮平の携帯は…壊れたはずなのに。
携帯の表示を見ると、亮平の実家からだった。
「はい。誰。」
表示を見ていながら、いつものでかた。
「亮平のお見舞い、毎日きてくれてるんでしょ?ありがとう。たまにはまた、おばちゃんに顔みせてね。」
電話はそれで切れた。
亮平の母ちゃん…菫(すみれ)さんは泣いていた。
「…は、原田先生?」
新見の声に振り向くと、亮平のキラキラした目があいていた。
「…ん。新見…先生。」
「原田先生!…い、今、今、お医者さん呼びますね。」
そう言って新見はナースコールを押す。
「新見先生…、その包帯…。すみません。怪我…させてしまって。女性なのに…。」
胸がチクリと痛んだ。「女性」その言葉が、頭を離れない。