亮平のおもちゃ


 家に帰って、ベッドの上で泣いていたのに、気がついたら眠っていた。
だけど、携帯が俺を起こす。

「はい。…誰。」

「相馬君?」

亮平だった。
俺は亮平の甘くて少し低い声に、また泣いた。
だから切った。
しばらくズット電話は鳴り続けた。
俺はやっぱり、亮平の電話をシカトできない。
だから俺は、携帯の電源を切った。


次の日、俺の学校の一角のトイレの周りはざわついていた。
俺と順平が殴りあいをはじめたからだ。
きっかけは、亮平のことだった。
俺はいいって言ってんのに、順平がしつこいから殴った。
それだけだった。

「ふざけんなッ!!てめぇ、今までの気持ちはドコ行ったんだ!?原田だって、記憶戻したいっつてたんだよ!」

順平は完全に、頭に血が上ってる状態だった。

「うっせぇ、これで良いっていってんだろーが!殺されてぇのか、てめぇ。」

俺も相当頭にきていた。

「やめてよ、2人共!そんなことで喧嘩しても、原田先生の記憶が戻るわけじゃないんだよ!?」

美樹はもっともらしいことを言った。
でも、順平には外野の声なんて届いてなかった。

「順平、やめろー!王子様みたいな可愛い相馬君の顔殴んなぁー!!」

「うっせぇ、俺は王子様じゃねぇ、はったおすぞ!」

順平も、美樹も、外野の女子も、イラつく、イラつく、イラつく。

「お前の気持ちはどうでも良いのかよ!俺は、あいつだけが幸せになんのは認めねぇぞ!!」

「知らねぇよ、順平の承諾なんて!俺がそう望んでんだよ、文句あっか?」

「やめろ、お前ら。」

生徒指導の教師が止めに入る。
俺は、イラついて、そいつを殴ろうとした。
でも、腕を押さえられた。
だから、蹴った。
学年担当の教師に足も押さえられた。
その瞬間、ズット忘れようとしていたレイプの事を思い出して、吐き気が襲ってきた。

「う…ぇッ…!!」

俺は吐く前に、気を失った。
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