亮平のおもちゃ
気がつくと、俺は病院にいた。
「…。うぅ…。」
頭…いてぇ…。
「相馬君?目ェ覚めたんですか?栄養失調みたいですけど、ちゃんとご飯たべてますか?」
俺はその甘い蜜みたいな声に飛び起きた。
「…亮平ッ。」
「あの、木下クンが君のこと、話してくれたんだけど、彼動揺してて、よくわかんなかったんだ。主治医さんが言うには、僕が相馬君のこと忘れたのは、君の事を1番に考えていたかららしいんだけど…。君と僕って何かあったのかな?」
俺は泣き出しそうになった。順平は、動揺した中でも、俺のこと思い出させようとしてくれたんだ…。
でも…。
「…べつに。たいした関係じゃねぇよ。ただ、亮平と俺は、幼馴染で俺は亮平を兄ちゃんみたいな存在だと思ってた…。だから、亮平も、俺の事ホントの兄弟みたいに、心配してくれたんじゃねーの?」
俺は辛くなって、布団の中にもぐりこんだ。
涙があふれてくる。
「え、それってつまり、君は問題児だったとか…?」
「ま、まぁ、…んなもん…だよ。」
少し声が震えた。でも、バレない程度だから、大丈夫。
そう思った瞬間、俺の布団が剥ぎ取られた。
「…なんで、泣いてるんですか…?」
俺は唇をかみ締めた。
やっぱり亮平は亮平。
俺の記憶がなくなっても、亮平なんだ。
亮平には泣いてること、バレちまうんだ。
「見んな。…別に泣いて…ねぇよ。」
「…前にも、相馬君僕の前で泣きましたか?」
心臓が止まるかと思った。
「おめぇがしつこいのがうぜぇの!飯くってるかとか、おめぇに関係ねぇだろ!」
「…そうですか。…じゃ、でて行きます。」
亮平がいなくなったあとの病室は、静かで苦しい。
でも、コレで良い。
これで良いんだ。