亮平のおもちゃ

「原田…」

「なんですか?」

木下君いたの忘れてた。

「まだ…達也の事、思い出せねぇの…?」

「あぁ…まぁ、そうですね。」

「…達也、最近辛そう。」

それは俺もわかっていた。
寝不足だと言って彼は保健室へ来る。
話を聞くと、不眠症だと分かった。
不安や、ストレスや、辛いことがある精神的なものだとも分かった。

「心当たり…あんだろ?」

「え…?」

いやいや、俺に言われても。

「お前だよ。」

「…どうゆう意味ですか?」

「最初は達也だって頑張ってた。だけど、お前に会うたびに、辛いんだと思う。だけど、
会いに行っちまうんだよ。アイツは。」

「…?それは…僕が彼の記憶をなくしているからですかね?」

「うん。」

「でも、彼は記憶を取り戻して欲しくないと言ってましたよ?」

「そんなのっ…」

木下君は寝ていた体を起こし、俺を睨みつけて怒鳴った。

「そんなの本心な訳ねぇだろッ!!馬鹿か、お前!」


 俺は、ズット相馬君を目で追ってる。
ヤバイ。本気で好きだ。
今日もまた、保健室のベッドでならぐっすり眠れている相馬君。
その綺麗な横顔に、俺は軽くキスをした。

「やばっ…、何やってんだ?俺。」

忘れた思い。
忘れた記憶。
それが、全部君で、俺はお前が好きで、お前は俺を好きでいたらいいのに…。



 記憶が戻ったら、君を手にいれられる気がするのは、気のせいなのか?
だけど、君はそんな関係を望んでいないのならば、俺はこのまま気持ちを隠し通そうと思う。
< 45 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop