亮平のおもちゃ
 放課後、保健の提出物を渡しに、保健室へ行った。

「なぁ、原田ぁ~。」

失礼します、も言わずに保健室へ入ると、夕日に染まった亮平のその綺麗な顔は、目をつぶっていた。
寝てるのかよ。と、心の中で舌打ち。って、子供か?俺。
俺は亮平の寝顔をジッと見つめた。
…油性ペンで顔に落書きでもしてやろーか?
俺は一人で、落書きをされた亮平を思い浮かべ、クスクスと笑った。
 それにしても、本当に亮平は美形だ。
それを証拠に、女子生徒にメッチャ告られてるし。
睫毛、女みてぇ。超長いな。
肌も綺麗で、唇なんて…
…唇。
俺鼓動が早くなる。
亮平の唇を触ってみると、とても暖かかった。
俺はキスしたいと思う。
しちゃダメかな…。

「いやいや、ダメに決まってんだろ、俺。」

独り言をつぶやく。
はたからみたら、変人だ。
でもしたい。どうしても。
欲情してる…。
方恋ってきめたのに。
でもキスだし…、寝てるし…ばれないよな。
バレなきゃ良いよな。

「亮平…。」

いいだろ?
別に。

チュッ

「へっ!?」

ガバッと、不意に伸びてきた亮平の腕は、俺の後頭部にまわり、俺と亮平にキスをさせた。
亮平の舌が、俺の口の中に入ってくる。
熱くて、甘くて…。
それは久しぶりに俺の欲を満たす。

「…ん…はぁっ…亮ッ…ん…」

亮平はキスをやめようとはしなかった。
…なんで?
なんで、こんなこと…?
だってコイツ、俺の事忘れてるんだろ?

「ん…ちょっ、…亮…ん…」

酸素を求めても、亮平は俺の唇をはなさない。

「…はっ…はぁ。りょ、亮平…?」

「…。俺…いま…。」

やっと手を離してもらい、俺が亮平に声をかけると、亮平は驚いていた。
…自分でやったくせに。
辛くなって逃げ出そうとする俺の腕を、亮平はすごい力で掴んでとめた。

「―――ッ!離せッ!!」

「逃げんなよ、お前は俺の玩具だろ…?」

「…え?」

…今、玩具って言った…。俺の…玩具って…。
なんで?
だって、記憶…。
俺の目から涙が零れ落ちた。

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