【完】霞む夏空と光
幼かった頃
星が、好きな子だった。
花火が上がると、その度に頬を膨らませた。
そしてその年も、食い入るように夜空を見ていた。
「あいちゃん!?」
「けいくん……」
名を呼ばれた少女は、振り返る。
そんな少女の難点、空を見ている間に、毎年のように家族と逸れてしまう。
「みんな心配してたよ。戻ろう?」
駆け寄った少年がそう言った瞬間、花火が上がった。
花火に釘付けになる少年。少女の瞳からは、涙が溢れ出す。
「え?あいちゃん、どうしたの!?」
尋ねる少年に、しゃくり上げながら少女は答える。
「…きっと…お星さまが泣いてるよっみんな…花火ばっかり見ちゃうん…だもんっ」
長い時間をかけて、ようやくこの言葉を言い終えた。
少年は、少女の震える肩に両手を置いて、言う。
「お星さまが泣いてるなら、あいちゃんが笑わせてあげないと。僕も一緒に笑わせるから。――…」
無邪気な笑顔を向け、そう言った。
このとき生まれた感情が自然と行方不明になったまま、十年以上がたつ―――。
花火が上がると、その度に頬を膨らませた。
そしてその年も、食い入るように夜空を見ていた。
「あいちゃん!?」
「けいくん……」
名を呼ばれた少女は、振り返る。
そんな少女の難点、空を見ている間に、毎年のように家族と逸れてしまう。
「みんな心配してたよ。戻ろう?」
駆け寄った少年がそう言った瞬間、花火が上がった。
花火に釘付けになる少年。少女の瞳からは、涙が溢れ出す。
「え?あいちゃん、どうしたの!?」
尋ねる少年に、しゃくり上げながら少女は答える。
「…きっと…お星さまが泣いてるよっみんな…花火ばっかり見ちゃうん…だもんっ」
長い時間をかけて、ようやくこの言葉を言い終えた。
少年は、少女の震える肩に両手を置いて、言う。
「お星さまが泣いてるなら、あいちゃんが笑わせてあげないと。僕も一緒に笑わせるから。――…」
無邪気な笑顔を向け、そう言った。
このとき生まれた感情が自然と行方不明になったまま、十年以上がたつ―――。