【完】霞む夏空と光
 今日の空模様は、ほぼ晴天。これが花火の光と煙に霞んでしまうと、想像するだけで私は悲しかった。


 瞼の裏に夜空を描き、歩く。



「……あれ?」



 出発して十数分。私は、ようやくして周りに誰もいなくなったことに、気付く。身体が勝手に人ごみを避け、神社の近くに来ていたのだ。


 これこそ本当の反射であろう。一切何も考えずに、ここまで辿り着けたのだから。


 特に意識せず、石段に座って星を見つめていた。



 田舎の素晴らしいところ。空気が綺麗で、星が綺麗に見える。建物の背が低く、空が広い。


 だなんて、ぼうと考えていたら、草むらのほうから物音がした。


 当然私は、驚いてのけぞる。


 何の音だろうか。誰しも一瞬浮かぶであろう悪い想像に、心臓がはち切れそうだ。


 お願い、それだけは。まだまずい事件には、巻き込まれたくありません。まだというより、できれば一生。


< 5 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop