【完】霞む夏空と光
 人が気分良く空を眺めている時に出すものとしては、世界で一番おかしいと思う。


 一瞬で気落ちした私など知らぬ素振りで、啓助は花火の袋を上げる。何のつもりか、嫌がらせか。



「これから花火が上がるっていうのに、更に嫌がらせ…?」



 キッと啓助を睨みつけ、私は不満を零す。


 星をかき消すという理由で嫌いになった花火を、今では訳も無く嫌っている。



「んー?別に」



 そう言いつつも袋を開ける啓助。別に、と言いながら花火をやろうということか。


 大々的に苦情を言おうとしたところで、啓助が取り出したもの。それは線香花火。


 啓助の花火のイメージを言おう。


 打ち上げ花火。両手でファイアー。とにかくうるさく明るい。


 一体どうしたものかと、逆に心配になってしまった。


 しかしそこで他の花火も取り出している。何をしようとしているのか。


 ……種類ごとに並べている。一体何の意味があるのやら。


 考えていたところで、呼びかけられる。



「…なぁ」


「ん?何」



 訝しげな顔で言うことには。


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