【COLORS②】スイカに恋したい
「──海はさ、イヤじゃないの?女子に間違えられたりすること」

私たちを帰り支度を整え、演劇部の部室に向かって廊下を歩いている。

「イヤに決まってるだろ、そんなの」

「じゃあ、どうして演劇に出ようなんて言ったの?女役なのに」

私も昔は海のこと『女の子』に間違えたくらいだもの。改めて見ても綺麗な横顔だ。決して女子にもひけはとらない。

「今更、自分のコンプレックスから逃げてもしょーがねぇじゃん。だったら逆にそれを利用してやるってことだよ」

「利用……する?」

「俺が『女』を演じることで喜んでくれる人がいるなら、それはそれでいいんでないの」

「……でも」

私はやっぱり彼のように割り切ることができない。

「俺たちってさ、『スイカ』みたいだよな」

「スイカ??果物の?」

「みんなそう思ってるんだよな。スイカって実は、果物じゃなくて『野菜』の仲間って知ってたか?」

「野菜?果物じゃないの?あんなに甘くておいしいのに」

「だから俺たちと一緒だろ?見た目と中身は違うってこと。どんなに『果物』ぽくても『野菜』って事実は変わらない。男に間違えられようが、なつが『女』ってことは変わらねぇんだから」



「……うん」

不思議だ。

今までイライラしていた気持ちが彼の言葉でふっと消し飛んでいた。
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