In the world
楽しみができると嫌いなはずの数学の時間も苦痛じゃなくなる。
突然、隣から小さな紙が飛んできた。
あおい、何かあったの?やけに嬉しそうだね
隣をを見ると比菜子がシャーペンを片手にこっちを見ていた。首を少し傾げ、栗色のふわふわした髪が揺れている。
比菜子は中学で出会ったけど一番の親友だ。
「うん、それがね、お父さんが今日帰ってくんの」
小声で返事をする。
「だからかあ。久しぶりだよね、2年ぶりぐらいだっけ?」
比菜子もまた、ひそひそ声で話した。
「最後に会ったのが中一の時だったから…うん、そのくらいだよね」
「私もおじさんにまた会いたいな、今日碧衣の家に行ってもいい?」
私は左手でOKサインをつくってみせた。