【短ホラー】ゆふだち
交えるひと
水底に水草が這っているのか、湖の水は澄んだ緑色に見えた。
風に水面が揺れ、星影が煌めく。
女は引いていた大八車を下ろした。
僕も同じくそれから手を放した。
「……ありがとう、運んでくれて」
僕に背を向けたまま、女が言った。
女の声は細々としていて、僕は最初、幻かと思った。
でも、それは確かに、僕に向けた言葉だった。
女は僕に気付いていたんだ。ずっと。
「……何を、運んでいるの」
僕が尋ねると、女は音もなく振り返った。
「大切なもの」
優しげな眼差しを向けながら。
風に水面が揺れ、星影が煌めく。
女は引いていた大八車を下ろした。
僕も同じくそれから手を放した。
「……ありがとう、運んでくれて」
僕に背を向けたまま、女が言った。
女の声は細々としていて、僕は最初、幻かと思った。
でも、それは確かに、僕に向けた言葉だった。
女は僕に気付いていたんだ。ずっと。
「……何を、運んでいるの」
僕が尋ねると、女は音もなく振り返った。
「大切なもの」
優しげな眼差しを向けながら。