【短ホラー】ゆふだち
しかし、約束は守られなかった。
私は急な病に冒された。
私は、彼女よりも遅く生まれ、早すぎる死を迎えることとなった。
途方もない年月に、彼女を一人残して。
「また、ひとりになってしまった……」
彼女の声は、数匹の蝉の鳴き声に掻き消されてしまうほどか細かった。
「やっと、会えたのに」
ふと、私の頭に懐かしい大昔の記憶が流れ込んできた。
そうか、私はすでに君と出会っていたんだ。
初めて会ったとき、私は地上に出てきたばかりの蝉だった。
木の下で一人で佇む君の側で、ずっと君に語りかけていた。
あの時私が死んだときも、君の手の中だった。
そして君は言うのだ。
「あなたと生きるのは辛い。あなたと私はいつもすれ違ってしまって、哀しいから……」
ぽつ、ぽつ。
夕立が降っている。
あの空は、君みたいだ。
私は急な病に冒された。
私は、彼女よりも遅く生まれ、早すぎる死を迎えることとなった。
途方もない年月に、彼女を一人残して。
「また、ひとりになってしまった……」
彼女の声は、数匹の蝉の鳴き声に掻き消されてしまうほどか細かった。
「やっと、会えたのに」
ふと、私の頭に懐かしい大昔の記憶が流れ込んできた。
そうか、私はすでに君と出会っていたんだ。
初めて会ったとき、私は地上に出てきたばかりの蝉だった。
木の下で一人で佇む君の側で、ずっと君に語りかけていた。
あの時私が死んだときも、君の手の中だった。
そして君は言うのだ。
「あなたと生きるのは辛い。あなたと私はいつもすれ違ってしまって、哀しいから……」
ぽつ、ぽつ。
夕立が降っている。
あの空は、君みたいだ。