【短ホラー】ゆふだち
終章
賑やかなお囃子が聞こえる。
少し離れた村の境内では祭りが催されていた。
毎年8月の終わりごろに行われる。
僕は一人で立っていた。
君と毎夜歩いた畦道に。
しばらく君の残像を追ったあと、僕は木の根元に腰かけた。
土は夜露で湿っていた。
「何百年も待ってくれたんだね」
君が横にいないのは分かっていたけど、僕は語りかける。
「待つよ。君がそうしてくれたように。だから、辛いと言って泣かないで」
冷たく澄んだ空には、柔らかな光を注がす三日月が浮かんでいた。
次に君と会ったら今度は僕が連れていこう。
あの、約束の場所へ。
fin.