【短ホラー】ゆふだち
運ぶふたり
夜の畦道を、二人は大八車を引いて歩く。

星は数えるほどしかなくて、月は雲で蔭っている、薄暗い夜。

蛙の騒がしい歌声と、虫の鳴く音が充満する。

僕は、女の背を見ながら、黙って車を押すのだった。

そして、次の木にたどり着くと、僕はすぐさま家路につく。

まだ女は気付いていない。

僕は一度も振り返ることなく女の許を去る。


でも、気付いていないのは僕の方だった。



――女は僕の姿を、見えなくなるまで見つめていたのだから。
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